

織物には、糸のうちに染色する“先染め”と、織り上げてから染色する“後染め”があります。とみひろのやまがた紬は、全て先染めを採用。経糸に使用する本繭を紡いだ細く滑らかな絹糸と、緯糸に使用する玉糸やくず繭から紡いだ、太さに均一性のない独特な風合いを持つ紬糸を、草木の旬の時期に合わせてあらかじめ染色しておきます。染織工房では基本的に受注生産はしていないため、職人たちが独自の発想のもと、ストックしておいた糸同士を色合わせしながら自由にデザインを考えていきます。そうした気質が職人たちの創作意欲を刺激し、より深く、温かみのある製品づくりへと繋がっています。
染織工房では、約三ヶ月かけて一反のやまがた紬を職人自らの手で織り上げています。機械織りはせず、時間をかけてでも手織りにこだわるのは、着れば着るほど身体に馴染む心地良さ、そして職人の手から生まれる手織りならではの優しい温もりを大切にしているから。織りの作業は、最初から最後まで一人の職人が通しで行います。一切釘が打ち込まれていない昔ながらの木製の織り機を、自分の感覚に合うように微調整しながら、先染めした一四八〇本の絹の経糸を糸枠に巻いて織り機に通し、シャトルを使って緯糸となる紬糸を織り込んでいきます。日々、工房の中に響く“トントン、トントン”という織り機の心地良い音。この“トントン”と糸を寄せる作業に対し、力加減を一定にして長く続けていくことが求められる中、職人たちは山形という自然に恵まれた穏やかな環境に身をまかせ、常にフラットな気持ちで作業に打ち込んでいます。